趣味の写真とのんきなお喋り
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■東京ミッドタウン(東京都港区:130721)
※写真は本文とは無関係。

西条美咲さんのファンです。
だつて可愛いし、演技力表現力いづれも申し分ないし、
(彼女は本格的な女優)
そしてスタイルだつて良いし、
ファンにならない方がをかしい。ね。

写真集は2冊目以降はすべて山岸伸先生の撮影
最新作の「SNOW KINGDOM White & Black」(2冊同時刊行)は
雪の中の(命懸けの)ポートレイトとして出色のもの。
あの小柄なからだのどこにあそこまでの「表現」への希求が詰まつてゐるのか。
瞠目するほかはありません。

そこで、時間を割いて西条美咲の主演する「サロメ」を観て来ました。
オスカー・ワイルドのです。R・シュトラウスのではありません。
シュトラウスだつたら楽劇になつてしまふ。

でも、「サロメ」はどうしたつて、R・シュトラウスの方が有名ですよね。
原戯曲のワイルド版は、原典のくせに、ちよつと分が悪い。
(てなことは、福田恒存も指摘してゐました。
ついでに言へば、「サロメ」の邦訳は岩波文庫の福田訳が白眉)

これは、たぶん、R・シュトラウス版には(オペラだから当然ですが)
音楽がついてゐるからでせうね、それも史上最高レベルの音楽が。

だから、芝居の「サロメ」を観ても私なんかは頭の中で
シュトラウスの絢爛豪華な音楽の鳴るのを止めることが出来ない。
特にあの七枚のヴェールの踊りではどうしたつてシュトラウスの音楽の方が上。
他の場面の音楽だつて、ごめんなさい、いちいちシュトラウスと違ふと思つてしまふ。
音楽監督はたいへんだ。

なほ今回の「サロメ」では現代風の味付けが(見た目の)が濃厚。
衣装は現代のもの(ヘンに19世紀末を強調されるよりはよい)。
兵士はマシンガンを手にしてゐるし、隊長ナラボートは拳銃自殺をやつてのける。
サロメの人物像だつて、古代の王女様といふよりも、
まさしく鬱屈と不満のかたまりの勝気な現代の娘といふ感じ。
そして身につける衣装は純白。
このキャラクター設定は、小柄な西条美咲にはぴつたりでした。

さて、ご存じの方はご存じですが、
サロメは王ヘロデの要求通りに七枚のヴェールの踊りを踊ります。
踊りの終りは七枚のヴェールの最後の一枚を脱ぎ捨てるところ。
ですから舞台上の役者(もしくはオペラ歌手)は非常に露出度の高い恰好になる。

この場面の演出には、文字通り「そのままに」演ずるものと「誤魔化す」ものとがあり、
(多部未華子がサロメを演じた時は後者)
で、今回はどちらかなといふのも興味の一つなのですが、
本上演では、文字通りに前者でした。
といふよりも、ここまで大胆に全裸になる演出は珍しいのではないかな。
ま、ほんの一瞬ですがね。
(そのせいでせう、この「サロメ」はR15指定)

しかし、その後がちよつと残念。
いえいえ、美咲ちやんがではなくて、お芝居として。
(脚本が状況劇場や新宿梁山泊に属してゐたコビヤマ洋一なので、
そりやあ、くせがある)
サロメは踊りの報酬として(ご存じの通り)
「銀の大皿に載せて、預言者ヨカナーンの首をちようだい」と
無茶苦茶なことを要求するのですが、この後の王とサロメとのやりとりは
うーん、余計な改変が目立つたなあ。
原作(ワイルド)の方でもこの部分、何とかサロメを翻意させようとする王の科白が
少々長くて、オペラ版では若干の刈込があるのですが、これはオペラ版の方が賢明でしたね。
そして(R・シュトラウスがあんなすごい音楽を書いたものだから)
王とサロメとの一対一のやりとりがこの上ないほど緊張感に満ちたものになる。
しかし、今回の上演では王の財産目録を腹心が科白を受け継いで述べるあたり、
ちよつと緊張感が削がれた。
ここは是非とも王ひとりが醜態をさらす場にして欲しかつた。そして
娘サロメがその王の焦燥と醜態を存分に嘲笑ふ場にして欲しかつた。

その後は皆さまビアズリーの絵でご存じの通り。
切り落とされたヨカナーンの首を掲げてサロメは
その唇に口づけします。

で、今回の演出では、処女サロメが童貞ヨカナーンに恋をして、
おのれの血が穢れる前に自分の恋心を成就させ、
それによつて、自分の呪はれた(近親相姦の)家系に終止符を打つといふ
裏テーマが盛り込まれたのですが、これも私には不満の残るものとなりました。
狂気の娘にそんな理知的なことを口走らせてはなりませんて。
そんな世俗の倫理観でサロメが行動しますかいな。
生首持ち上げてキスしてエクスタシーを感じるんだよ、サロメは。
そして今回の演出でも、その生首とエクスタシーはあんまり手が入つてゐないんだよ。
だつたらこれはどうしたつて矛盾さね。

さらに加へるならユダヤ人その他の宗教論議の場は
面白くなかつた。どうせならもつと毒が欲しい、それも猛毒が。
扱ひがどうにも中途半端で、惨劇の前のコミックリリーフになつてゐない。
言葉遊びとしても不十分。
不敬を承知で徹底的に茶化すか、
あるいは(オペラ版がさうであるやうに)カットすべきだつたと思ふ。

といふ風に書くと文句ばかりの観劇記録になりますが、
しかし役者は良かつた。
サロメの西条美咲だけでなく、
王ヘロデの大和田伸也も
王妃ヘロディアスの島田洋子も
そしてヨカナーンの秋元道行も皆、見事でした。

先週の金曜日に、今回の「サロメ」について何気なくツイートしたら
美咲ちやんご本人にリツイートされたので、それに気をよくして(笑)急遽、
土曜の午後に時間を作つて劇場にまで行つたといふ次第。
終演後は最新の写真集にサインをしてもらひ、また握手までしてもらつて、
(他の客と時間をずらして写真集を買つたので、
彼女はいつたんロビーから楽屋に引つこんでゐたのだが、
わざわざもう一度ロビーまで戻つて来てくれたのだ!)
ミーハーな私は大喜びでした。




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サロメ
の内容は全く頭に残っていませんが、大学2年の時の英語の教材だった様な
気がします(本当か?(笑))。試験前に和訳を丸暗記して、答案用紙にただ
訳文を書くという様なことをしていたので、何も身についていません(恥)。
きじねこ 2014/03/08(Sat)23:58:10 編集
Re:サロメ
うお?!
試験にそんなんが出たんですね!
私の大学2年の時だと…(遠い目)…何だつたつけ??
【2014/03/09 02:42】
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支配人プロフィール
HN:
NOMi Koichi
年齢:
51
性別:
男性
誕生日:
1965/07/09
趣味:
写真、音楽、文学
自己紹介:
Koichi NOMi と申します
東京在住の写真好きです

女の子ポートレイトを中心に
街やらライブやら
色んなものを写して
表現して楽しんでゐます
皆さま
どうぞよろしくお願ひ致します
(*^▽^*)/

フランスの写真家
ギイ・ブルダンが大好きです
(Guy Bourdin, 1928-1991)
Guy Bourdin: A fetish for fashion
明快な細部と曖昧な物語性
大胆な構図と緻密な状況設定
そして色
どこをとつても素晴しい!

私も
どうせ写真を撮るなら
彼のやうな作品が撮りたいな
とは思ふのですが
ちよつと道のりは遠いかな
(苦笑)

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