趣味の写真とのんきなお喋り
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一年程前のこと。ある古いカメラ雑誌が、デジタルか銀塩かといふ特集を組み、写真家やカメラ愛好家の意見を掲載したことがあつた。
私は、デジタルも銀塩もといふ考へなので、二者択一もしくは二項対立的な発想が理解出来なくて困つたのだが、中でも一人、私を特に困惑させた意見の持主がゐた。


彼は、撮影後、液晶画面ですぐに確認し、駄目ならその場でもう一度撮影が可能なデジタルの世界にはなじめないのださうだ。反対に銀塩ならばその場の撮り直しなどきかないため、自分が求める一期一会の世界を写し取ることが可能なのださうだ。

言ふまでもないが、この意見は間違つてゐる。液晶画面による撮影直後の確認が出来ようが出来なからうが、写真として記録された映像はある特定の時刻に属するものであり、その時刻を再現することが物理的に不可能である以上、似たやうな写真の量産といふ事態にはなり得ても、同一写真の量産はあり得ない。
むろん、撮影者が、似たやうな写真をいつぱい撮つておけば、一枚くらゐは使へるものが撮れるだらうと考へるのなら、そこから撮影者に気の緩みが生じはしないかと懸念するのはもつともなことだ。しかし、その懸念は撮影者の心構へに関ることではあつても、デジタルか銀塩かといふカメラの機構に関ることではない。デジタルカメラであらうとも、撮影者の気構へ一つで、写真を一期一会の藝術に昂めることは可能である。もちろん、銀塩カメラを使用してゐようとも、撮影者はいくらでも自分の気を緩めることが出来るだらう。

ここで復習しておけば、写真は光を写し取ることにより成立するのだが、同時にそれは時間を切り取る行為であることを意味する。
繰返すが、私たちに同じ時間の再現は不可能なのである。時間といふものは、過ぎてしまへば、二度と元に戻せぬ遠いところへ永遠に去つてしまふのである(比喩的に言へば)。
だから下に掲げる写真、同じ絞り値同じシャッター速度を設定したからといつても、この画像を再現することは二度と出来ないのである(再現する価値の大小寡多は今は不問に附す)。


ここで私たちは気づくだらう。写真を撮るとは、時間が過ぎ行くといふことそのものに抗ふ行為なのだといふことに。そして、撮影者が自分の写真を人に見せるといふことは、自分と世界との関係性を他人に見ることを強いるといふ、いはば暴力的な行為であるといふことに。

むろん、この世には麗しい暴力といふ二律背反は実在する。

だが、それはすでに別稿の課題であつた。

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無題
なるほどな〜

俺はデジャブのように
あの時の光景を再び見たい。

と言うのが根底にあって
あの時をデータとして分析して
いるんだな〜

そろそろ身体にガタが出始めた

今年こそは20年前中途挫折した
サーフインの水中ショットに
再度チャレンジしたいものだよ!

ぶっちゃけ、丘の上の写真は
スリルが無くてレリーズ時の
オルガスムスが無く詰まらない。
YODA URL 2008/03/22(Sat)04:07:43 編集
Re:無題
これはスーザン・ソンダックの写真論とミハイル・バフチンの視点論の応用(剽窃とかパクリとかではなく)のつもりです。
でも、こむづかしい本なんか読む前から、私は、写真はまづは消え行く風景(広義の。別に地球温暖化や環境破壊ばかりによつて消えてゆくものばかりでなく)を記録するものだと思つてゐました。
そして、記録した後、現実の時間は記録された時間なんかにお構ひなしにどんどん先に進んでゆくといふ非情さも感じてゐた……やうに思ひます。

撮つた瞬間のオルガスムスといふのは、分りますねえ!
これはうまく行つたア! といふ瞬間は自分も経験したことがありますから。

そしてその時のスリルといへば、予定調和的要素のひとつもない、すべてが偶然から成り立つてゐるとしか思へない、しかし代替の存在しない必然を、しかとわが身に感じた瞬間のエクスタシー……でせう。

しかし、丘の写真、私なんかには勉強になりましたよ。
【2008/03/23 02:31】
おはようございます!
T-T.Nさん、いつもコメントありがとうございます!
外部リンクに『T-T.Nさんの 18% Gray』貼らせて頂きました!
PIE2008 行ったんですね(^^) ウラヤマシイ・・・
eldora_dora URL 2008/03/22(Sat)09:29:41 編集
Re:おはようございます!
いえいえ、こちらこそヨロシクです。(^.^)
えるどらさんはPIE、行かれなかつたんですか?
楽しかつたですよ~。^^
(ほとんどオリンパス・ブースにしか寄らなかつたのですが)
でも、来年の日程では、私は参加出来なささうです(泣)。
【2008/03/23 02:34】
一期一会
気を緩めるかどうかは、デジタルかどうかには関係ないという意見に賛成です。
 私のような素人には結果がその場で確認できるデジタルカメラは有り難いです。旅先で撮った記念写真がピンぼけだったときの失望感といったら・・・(笑)
きじねこ 2008/03/22(Sat)23:25:31 編集
Re:一期一会
その場での確認つて、モデル撮影会では重宝するんですよ。
モデルさんに、液晶見せて、「こんな風に写つてるんですよ~」と見せると、たいてい喜ばれます。
モデルさんだつて、自分がどう写つてゐるかは(とつても)気になりますからね。
だから、液晶一つで会話のはづむデジタルカメラは、なかなか優秀なコミュニケーションツールなんです。^^
【2008/03/23 03:44】
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支配人プロフィール
HN:
NOMi Koichi
年齢:
51
性別:
男性
誕生日:
1965/07/09
趣味:
写真、音楽、文学
自己紹介:
Koichi NOMi と申します
東京在住の写真好きです

女の子ポートレイトを中心に
街やらライブやら
色んなものを写して
表現して楽しんでゐます
皆さま
どうぞよろしくお願ひ致します
(*^▽^*)/

フランスの写真家
ギイ・ブルダンが大好きです
(Guy Bourdin, 1928-1991)
Guy Bourdin: A fetish for fashion
明快な細部と曖昧な物語性
大胆な構図と緻密な状況設定
そして色
どこをとつても素晴しい!

私も
どうせ写真を撮るなら
彼のやうな作品が撮りたいな
とは思ふのですが
ちよつと道のりは遠いかな
(苦笑)

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